ピアノのための練習曲集第1巻

第1曲「Désorde 無秩序」

左右の手のリズムのずれを楽しむ作品。左右の音色の差を最大限目立たせる意味か、左手は黒鍵のみ、右手は白鍵のみを使うようになっています。右手はハ長調ではないので複調ではありません。もちろん、無調でもなく、リゲティ独特の音が鳴り響きます。さて、リズムの分析ですが、最初は左手:右手 = 8:8で進みます。左手は（左手の小節線で数えて）第42小節まで8つの音符の固まりで、つながれていますが、右手は数小節おきに7つの音符に減っています。そのために左右の手は徐々にずれていきます。リゲティのリズムのずらし方はスティーブ・ライヒのピアノ・フェイズよりクラッピングミュージックに似ています。

左手も第42小節を超えると7つの音符の固まりへと減ります。その直後右手が6つの固まりに減ったりして、またずれ方が移動していきます。このように常に左手≧右手の関係を保ちながら左右とも一つずつ音が減っていき、緊張感も増していきます。以下の譜例では、3つまたは2つの音型が基本となっています。この部分は、低音がバスドラムのようにブリブリ鳴っていて実に爽快です。未来のビートマニアに採用間違いなしか！？

この直後に両手とも1音が1つの固まりとなり、連続的なアクセント記号が付きます。そこで極度に高まった緊張は一旦切れ、また、8:8の比で再開されます。ただし、今度は両手とも高音部に集められています。更に前半と違うのは、左手の音のまとまりが増えていくところです。右手は最後まで8つの固まりで連なっていきますが、左手は9，10，11…とだんだん増えていきます。最後には24個の固まりとなり、左右とも最高音のCで終結します。