ピアノのための練習曲集第2巻

第9曲「Vertige 眩暈（めまい）」

ほとんどすべてが下降する半音階的スケールから成り立っている作品。その構造は最初の4小節に示されています。

スケールは短い（狭い）間隔で幾重にも重なり合い、必然的に重音のスケールが多発します。しかも、"senza ped."の指示。スラーの指示通り滑らかさを保ちながらも決して濁らない清潔なタッチが必要です。やはり、この作品でも均一なリズム感はなく、小節線は参考程度。いやはや、とんでもない作品です。

両手の下降スケールが音量を増しながら互いに近寄ってくるところ。重音の形の多彩さは異常なほど。めまいがしそう…。しかしながら、よく見ると長短様々な半音階的スケールが重なり合っているだけであることが分かります。最後は最低音のAまで下降して静かに終わります。

逆に、この練習曲集には上昇音型だけから成り立っている作品もあります。それはこの第2巻のクライマックスを形作る2作品「悪魔の階段」と「無限柱」です。